鋼の体をした人間

誰もいない広い格納庫のど真ん中に大の字で寝転がり静けさを感じる。いつの間にか寝てしまうが地面の少しの振れに目が開く。規則的な着地の振動。耳をすませば微かにブースターの音が聞こえる。見えなくてもそれだけで脳裏に動きがトレースされる。あと何回のアサルトブースト、あと何回の着地。さぁ、ほらもうすぐ。
開いた格納庫に規則的な足音が響き壁際のハンガーへ向かう、かと思えばこちらに近づいてくる。黒い逆関節が静かに見下ろす。駆動音を鳴らしてそれは屈むと手を伸ばしてくる。寝転がる俺をひょいと摘んで持ち上げる。鋼鉄の手だというのに躊躇わず人間を掴むのは、こいつにはこの鋼の体が手足なのだと。
そのままハンガーで調整を終えて出撃を待つロックスミスに向かう。棚の上にそっとぬいぐるみを置くようにロックスミスの胸の上に置かれる。道具はきちんと片付けるこいつにとっては、俺は床よりここが定位置なのだろう。そうしてハンガーの定位置に戻るのを見て笑ってしまう。鋼の体をした人間。レイヴン。

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